【ちょっと一息。趣味の教室】夏の名作ホラー映画~クリエイターなら観ておきたい映画

悪魔のいけにえ

クリエイターは様々なものから刺激を得ています。アート、音楽、映画、ゲーム、スポーツ、書籍。このコーナーは、そんなクリエイターの感性を刺激するものの中から、映画と書籍にスポットを当てご紹介をします。
第1回目の今回は、猛暑の夏を少しでも涼しく過ごしていただくためにホラー映画の名作をご紹介したいと思います。どの作品も力で押し切るような最近のホラー映画と違い、演出された怖さが後を引きます。DVDでレンタルできるものばかりですので、ぜひご覧になって熱帯夜を乗り越えてください。


 

悪魔のいけにえ

(監督:トビー・フーパー 出演:マリリン・バーンズ 1974年アメリカ)
テキサス・チェーンソー・シリーズ第1作。
本作以後10年以上が過ぎてから作られた幾つかの続編はどれも自己模倣のようなパロディ的仕上がりになっていますが、本作はMoMAに永久保存されるほどの名作として名高い作品です。
監督のトビー・フーパー自身もこれ以降はB級ホラーを連発することになりますが、本作ではリアリズムに徹し、レザーフェイス登場のあまりにもあっさりした演出や、同じ鉄扉のシーンも微妙にカメラ位置を変えるなど緻密に計算された演出が光っています。
 

13日の金曜日

(監督:ショーン・S・カニンガム 出演エイドリアン・キング 1980年アメリカ)
言わずと知れた、ジェイソンが襲って来る「13金シリーズ」の原点です。後に来るスプラッタブームの片鱗を見せつつもゴシックホラー的な雰囲気を感じさせ、13金シリーズを見慣れたファンの方には意外な仕上がりとなっています。ジェイソンがホッケーマスクを被ったのは第3作目からで、この第1作を今改めて見直すと、人々のイメージを良い意味で裏切る怖いジェイソン像になっています。
なお、ベーコン指数*でも知られるケヴィン・ベーコンが端役で出演しています。
*ベーコン指数=世界は6人でつながるというネットワークに関するスモールワールド理論から派生した遊び。出演作の多かったケヴィン・ベーコンを皮肉り、ハリウッドの役者が何人でケヴィン・ベーコンにつながるかを数えるもの。
 

ミザリー

ミザリー
(監督:ロブ・ライナー 出演:ジェームズ・カーン 1990年アメリカ)
ホラーの帝王スティーブン・キングの原作を「スタンド・バイ・ミー」のロブ・ライナーが映画化。熱狂的ファンが小説家を恐怖に陥れる「おたくホラー」とでも呼びたい作品です。
このジャンルには古くはクリント・イーストウド監督「恐怖のメロディ」、マーティン・スコセッシ監督「キング・オブ・コメディ」などの秀作が見られますのでそちらも要チェック。軽妙な会話で人間関係を描く作品が持ち味のライナー監督は、本作でも同様の演出で日常性と対比したあっけらかんとした狂気、閉塞感のない絶望感を描き出しています。
 

キャンディマン

(監督:バーナード・ローズ 出演:ヴァージニア・マドセン 1992年アメリカ)
キャンディマン、キャンディマン、、と5回唱えると、キャンディマンが背後に現れ喉をかき切る・・・。そんな都市伝説に端を発するホラー。
監督は「不滅の恋/ベートーヴェン」「パガニーニ/愛と狂気のヴァイオリニスト」など有名芸術家像を描く作品も多いバー ナード・ローズが担当し、キャンディマンと言う戯画化されたキャラクターにリアリティを与えています。
冒頭の真俯瞰のシーンを始め全編を覆う陰鬱な空気感は、他のスプラッタ主体のホラー映画とは一線を画しキャンディマン自身の素性の暗喩となっています。

キャンディマン
 

女優霊

(監督:中田秀夫 出演:柳ユーレイ 1996年日本)
「リング」の中田秀夫がブレイク前に撮った撮影現場を舞台にしたホラー。低予算が故の思わせぶりな演出はJホラーシリーズ随一の出来と言えるでしょう。出るのか、出ないのか?この先どうなるのか?このバランスが見る者の背筋を必ずぞっとさせます。
幽霊の見えなさ加減が持つ薄気味悪さは、最終的に凝った造作のクリーチャーで脅す最近の洋画ホラーとは違い、見終わった後も尾を引くものに仕上がっています。よく指摘されますが、何事も資金に頼った安易なアイディアより予算の制限をどう克服するかと言う工夫が勝ることがあります。
 

プロフェシー

(監督:マーク・ペリントン 出演:リチャード・ギア 2001年アメリカ)
1960年代アメリカで実際に目撃談が多く語られたモスマンを元に作られた作品。監督のマーク・ペリントンはMTVで独自の演出を評価された人で、前作の「隣人は静かに笑う」と同様にノイズ、デジタル処理を効果的に使用して現代的な怖さの演出に成功しています。
ラストシーンまで居心地悪く明確にされないストーリーテリングは、サスペンス映画、パニック映画を彷彿とさせ、作品にリアリティを与えながら見る者の心を掴んで離さないでしょう。抑制の効いた大人の怖さと言えます。

 
イラスト:中野 元貴さん(町田・デザイン専門学校 グラフィックデザイン科卒)

【ちょっと一息。趣味の教室】今後の予定。
次回:『クリエイターなら読んでおきたい本』~世にも奇妙な人々~

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