
Webクリエイターの需要が高まる昨今、自分のライフワークバランスに合わせて、さまざまな働き方が選べるようになりました。この連載では、正規雇用、派遣社員、フリーランスと、それぞれの働きかたでWebクリエイターとして活躍する方々に、仕事をする上で実際に体感したメリット、デメリットを伺い、紹介していきます。
最終回は、働きかたの違う3人のWebクリエイターの方々にお集まりいただき、座談会を開催。それぞれの働き方について、思うところを語っていただきました。
【参加者】
Aさん 35歳 男性
エンジニア・プロジェクトマネージャー 大学卒業後、IT関連会社に就職。3年後に転職し現在に至る。正社員。
Bさん 30歳 女性
Webプロデューサー 大学卒業後、IT関連会社に就職。2年後に退職し、派遣社員に。現在はフリーランス。
Cさん 42歳 女性
Webデザイナー 大学卒業後、印刷会社に就職。現在、派遣社員。
目次
本日はお集まりいただきありがとうございました。Aさんは現在も正社員、Bさん、Cさんも正社員経験をお持ちです。まず、Webクリエイターとして、正社員で働くことについて、メリット、デメリットなどあれば教えてください。
Aさん:
会社に帰属しているエンジニアは、イコール仲間内だけで仕事ができるということです。話すのが得意でなくても、ITスキルさえあれば仕事が成立します。実は、私自身、大勢の方の前でプレゼンテーションしたり、面識の浅い方に自分の意見を通したりすることに苦手意識があって(笑)。コミュニケーション能力に不安がある人にとっては、自分らしく、仕事がしやすい環境ではと思います。
Bさん:
そうですね。フリーランスだと、ひとつひとつが自身の作品になるという思いがあるし、実績にも関わってくるので、内容を詰めていくにあたって、クライアントと意見を戦わせる部分も少なからず出てきます。営業の方など、味方になってくれる人や話をわかってくれる人がいるのは、作業を進めるにあたって心強いことだと思います。
安定を求めて正社員を希望される方も多いと思うのですが…
Cさん:
生活が安定するかどうかは、勤めている会社によって左右されますよね。だから正社員にさえなれば安泰、ということではないような気がします。福利厚生が充実している、ボーナスが支給されるというのもその会社次第。10年後にあるかないかわからないような会社はいくらでもあるし…(笑)
Aさん:
規模によっていろいろかもしれませんね。それに、Webの作業って急なトラブルが発生したり、すぐにリカバリーしなければならなかったりして。仕事を時間で区切れないところがあるから、正社員だと“残業は当然”という風潮が生まれてしまうこともなきしにもあらずですね。
Cさん:
余計に働いた分が報酬に反映されれば文句もありませんが、定額で働かされ続けて、私はパケホーダイか!って思ったこともありました。
Bさん:
(笑)。確かに、仕事が永遠に終わらないというループに巻き込まれてしまうこともありますね(笑)。それが自身の勉強になったり、充実に感じて、楽しいうちはもちろんいいんですが。
Cさんにとって、時間できちんと管理されている派遣社員という働き方はあっているんですね。
Cさん:
派遣社員の仕事は、スケジュールが全部引いてあって、自分が担当する内容も事前に決まっています。それさえきちんとやればいい、という気楽さは大きいです。ただ、たとえば、複雑なわりにはあまり有効じゃないシステムになっていることに気づいてしまったりすると、これで本当にいいのかなと疑問に思ってしまったり…。指示されたことを行うのが派遣社員の仕事だとわかってはいますし、いつまでも引きずったりはしないんですが、もやもやっとする瞬間はあります。
Bさん:
自分でできる分野が広がれば広がるほど、派遣社員に割り当てられる業務に物足りなさを感じることはあると思います。その点を割り切って、粛々と自分の作業に没頭できる人に、派遣社員という働き方は向いているのだと思います。
Aさん:
定時があるというのが派遣社員のメリットですよね。私の妻はWebデザイナーのアルバイトをしているんです。シフト制で入っても、“もうちょっとやってもらえる?”と延長されて、結局、ずるずると開放されない(笑)
Cさん:
直接頼まれると断りにくいですもんね。派遣会社を通していることで、守られているなというのは痛感します。
守られている、という点でいうと、フリーランスはすべて自己責任の中での仕事になりますね。
Bさん:
そうですね。先ほども言いましたが、クライアントと意見を戦わせるというシーンも少なからずありますし、予算管理などもすべて自分で行わなければいけません。一方で、裁量できるので、ワークライフバランスが自在というメリットがあると思います。
Aさん:
独立するとしたら、マーケティングがわかるとか、アナリティクスがわかるとか、何か付加価値がないといけない気がします。デザイナーにしても、ロジカルに、たとえば案を2種類つくったとき、それぞれどういう意図でつくったのかが説明できないと、納得はしてもらえないんじゃないかな。クリエーティブのセンスに優れているだけでは受注はこないんじゃないかと思ったり…
Bさん:
コミュニケーション能力というか、自分を売り込むテクニックは必須だと思います。Webの幅が広がってきた分、ひとりの人間が全部見られますというのは無理になってきていますよね。ディレクターとデザイナー、コーディング、マーケティング、分析と立案。大きい仕事であれば、プランナーやリサーチャーなどもそれぞれ担当者が別にいます。私はデザインもコーディングもできますが、どちらかと言うとデザインより。コーディングは苦手なんです(笑)。それでもなんとかなりますよ。
Cさん:
フリーランスになるための、初めの一歩がわからないんですよね…。どうやって仕事を取るのかとか、値付けはどうしたらいいのかとか…。たまに知り合いから仕事を依頼されるんですが、請求書をつくるのが苦痛で…
Bさん:
仕事を依頼されている時点で、もう、Cさんはフリーランスだと思いますよ。確かに値付けは難しいですが、それは、もう、ほんとうに手探り。続けていきながら当たりを付けていくという感じだと思います。
Aさん:
弊社でもフリーランスのWebクリエイターさんと組んで仕事をしている部署がありますが、活躍されている方は本当に優秀。自分もそこまでいってみたいなという気持ちもあります。ただし、いい面だけ見て憧れて、現実をわかっていないとフリーランスになるのは難しいのではと。どういう立場で働くとしても、実績をもつということが大切なんじゃないかと思いますね。働きながら、判断基準を模索し、見出していく。それが、その先の働き方をつくっていくんじゃないかと思います。
正社員、派遣社員、フリーランス。お集まりいただいた3名の方は、それぞれ「今」の自分に合った働き方を選択されています。それは、未来にはまた変わるかもしれません。でも、どんな立ち位置でも継続していくことがキャリアになります。
そして、一様に口を揃えて話されていたのが、「Webクリエイターの仕事は日々勉強」ということでした。更新されていく技術に対応し、時流にあったデザインをクリエイトしていくためには「常に最先端の知識を持っていることが重要と痛感する」とのこと。技術の変化が早いWeb業界は、常に勉強が必要であると言われます。さらに、各自のライフスタイルもその時々で変化します。その点で、Webクリエイターは、常に「最適」とは何かを考えながら働く必要がある職種だと、この座談会を通して感じました。