
タイトルと見出し、そして本文という、シンプルなフォーマットが基本になっているWeb記事。ここにも紙媒体との違いが存在します。タイトルの付け方の違いについては、すでにこの連載で説明させていただきました。今回は、中身。見出しと本文の違いについてお話します。
目次
■「フック」の役目をもつWeb記事の見出し
まず、見出し。
Web記事の構成は、タイトルの下に「リード」があり、数行空いて、「見出し」、「本文」と続くのが一般的です。そして、本文の中には、1つ以上の中見出しが差し込まれます。この中見出しが、Web記事と紙媒体の記事とで大きく役割が違ってきます。
紙媒体の記事でも、座談会やインタビューなどの長い文章の中には見出しが入りますよね。そしてその場合、中見出しは全体のレイアウトを見てどこに差し込むか、ということも重要視されます。紙媒体の中見出しは、本文の要約、読みやすさの向上という役割だけでなく、デザインとしても機能しているからです。そのため、紙媒体の場合、中見出しはページ全体を俯瞰でとらえて、バランスのよい場所に設定されます。美しい見出しの位置をキープするために、本文の文字数を微調整したという経験のある紙媒体経験者の方も多いのではないでしょうか。
一方、Web記事の中見出しの最大の役割は、「本文を読んでもらうためのフック」です。
たとえば、ガス自由化。ネットには、識者の方からキュレーションライターさんまで、多くの方によるガス自由化に伴うメリットとデメリットについての記事があります。ちょっと読者の気持ちになって「ガス自由化」「メリット」「デメリット」などでキーワード検索し、該当記事をいくつか閲覧してみてください。本文が長い記事ばかりではないでしょうか。
新しい仕組みを紹介する記事は、言葉を重ねてきちんと説明する必要があります。また、Web記事はSEOが優先されるため、一定の文字数が必要です。そのため、記事が長くなってしまうのはしかたがないことです。でも、長ければ長いほど、読むのに時間がかかり、読者にとっては大きな負担になります。
すると、どうなるか。。
読者は、さーっと画面をスクロールして、自分に必要な情報が書いてある部分を探すのです。そのときに「フック」となるのが、太字でサイズも大きい「中見出し」です。スクロールしている中でも、パッと目に飛び込んでくる中見出し。スクロールを止めたくなる中見出しがなければ、その記事は読まれません。
だから、読者が認知しやすく、ひと目で必要な情報が書いてあるとわかるような、短く単純な小見出しがWeb記事には必要なのです。
■キーワードを含む一文を特に魅力的に仕上げる
本文の構成にも違いがあります。Webの場合、キーワード検索して記事にたどり着くことが多くなります。そして、そのとき、読者が最初に読む本文は、記事そのものの本文ではありません。検索結果画面の記事一覧、タイトルの下に表示される本文の一部です。
そこには、検索ワードがからむ箇所が表示されます。その文章で興味を引かなければ、読者は別の記事にいってしまいます。そのため、Webの本文は、キーワードまわりの構成に気を配り、とくに魅力的に書く必要があります。
■Web記事の最適な文字数にも配慮する
また、中見出しに続く本文の文字量にも配慮が必要です。
ツイッターをやられている人は納得していただけると思いますが、だいたいのことは140文字もあれば、かなりしっかり説明できます。そして、人がWebで一気に読める文字量も、140文字~200文字、多くても350文字程度です。適宜、行間をあけ、中見出しを差し込んでいくと、読みやすさが向上します。
Web記事は、書こうと思えばみっちりと、際限なく、長く書くことができます。そのため、文字制限がなく自由に書けると思ってしまいがちです。実は、これも紙媒体出身者が陥りやすい穴のひとつ。
レイアウトによって字数制限されている紙媒体は、確かに窮屈に感じるでしょう。なので、ボックスを気にせず、いくらでも原稿を書けるWeb記事を書くのはある意味楽しい。また、ギュウギュウに詰まった原稿を書くと、密度の濃い内容になっているような気がしてしまいます。でも、最初の読者となる編集者からは「読みにくい!」と思われることも多々あります。さらには、「Web記事をわかっていない」「だから紙媒体出身者は面倒くさい」と思われてしまう場合も。
「中見出しを付けてくれ」という差戻しならば、挽回ができます。でも、Web媒体の場合、スケジュールの関係で編集担当者が原稿に手を入れることも少なくありません。「読みにくいなぁ…」と思いながら、中見出しを付ける作業をしていると、次の依頼をしたくなくなってしまいます。原稿の手直しの手間を最小限にすることも、Web編集者との関係を良好に保つ秘訣のひとつです。
<プロフィール>
簗場久美子(やなばくみこ)
四半世紀以上にわたり、女性誌やライフスタイル誌など、多くのメジャー紙媒体で編集・ライティングに携わる。現在はコラム執筆他、Webマガジンのコンサルティング、ディレクション等で活躍。未経験者のWebライター育成にも尽力、実践的レクチャーに定評がある。
『紙媒体出身の編集・ライターがWeb媒体で注意すること』シリーズ
第1回【編集ライター】紙媒体出身者がWeb媒体で注意すること~キャリアチェンジの心得~
第2回【編集ライター】仕事の受け方・編集とのやりとりの違い~紙媒体出身者がWeb媒体で注意すること~
第3回【編集ライター】経験者が戸惑うWeb媒体のギャランティと締め切りの違い~紙媒体出身者がWeb媒体で注意すること~